アンガマのはじまり 八重山全域


昔、あるところに、ひとりで三人の息子を育てている父がいたと。息子たちは大きくなって、みな嫁をもらい、

ひとりひとり分業させたそうだ。父には常日頃から貯えた銭がもう沢山あったと。そこで、

「自分はトゥスイ(年寄り)になったら働けなくなるから、自分を助けてくれる子供に褒美としてこの銭をくれよう。」と思っていた。

いよいよ年を取って寝込んだ父は、子供の心を確かめようと三人を呼んだ。「実はお前らに頼みごとがある。

自分はこのごろ年を取って動くこともできない。ヤブ(漢方医)に診てもらったら、人の乳を飲めば助かると言うのだが、

お前らの子供を一人でも殺して、その分の乳で私を助けてはくれないか。」すると、長男が言った。

「何をいうか。父はもう年でもあるし、やがてこの世を去る人である。これから育っていく赤ん坊を殺してまで父を

助けるわけにはいかない。」次男も言った。「兄の言うとおりだ。父は今日にも明日にも後生(あの世)へ行く人だ。

今から大きくなる子供と父を換えるわけにはいかない。」うつむいてしまって返事もしない三男が、ふっと頭を上げて言った。

「よろしい。子供はいくらでも代わりを産むことができます。でも、父は死んだらもう二度と見ることはできない。

私の子供一人くらいは殺してでも父を助けよう。私の子の命は父にあげよう。」

「それでは、お前の子供を埋める場所は、村の後ろに自分がこしらえてあるからそこに埋めよ。」

夜になってから、妻は赤ん坊を抱き、夫は籠を担いで父が言った山の中に入って行った。そうして、三男が穴を掘っていると、

鍬の先にコツンと物が当たったと。つかんでみればそれは大きな壺で、中はいっぱいの銭であった。

「一応父に言ってからもう一度掘ろう。」と行こうとすると、二人の前に父が立っておった。

三男が本当に穴を掘るかと隠れて見ていた父は、感心して言った。

「私は今日にも明日にも後生へ行く身だ。自分の大切な孫を殺してまで生きようとは思わない。

お前が一番親孝行だから、銭はすべてお前がもらいなさい。必ず孝行の子にやろうと思っていたものなのだから。」

帰ってきた三男夫婦に、長男と次男が欲張って言った。「これはお前一人が取るはずのものではない。私らにも分けるべきだ。」

しかし、三男が「これは父から勧められた褒美だから自分のものだ。」と言ったものだから、

長男と次男は怒って三男を殺し、埋めてしまったそうだ。さて、三男が後生へ行くと、閻魔王らが言ったと。

「お前は親孝行者のいい息子だ。こんなに早くこの後生へ来る人ではないから帰りなさい。」

帰ろうとすると、また言ったと。「今の姿で帰ればまた殺されるから、変装して帰れよ。」

それで三男は、女の姿になって帰ったと。それがアンガマのはじまりで、7月7日の七夕の日には、

男はみんな女の姿になり、女はみんな男の姿になる。これをアンガマという。
   

旧暦7/13.14.15の3日間がソーロン(旧盆)とされています。
13日ウンカイ(御迎え)、14日ナカヌビー(中の日)、15日ウウクリ(御送り)。
アンガマはこの3日間に現われます。ウウクリ(御送り)の翌日が
イタシキバラで、獅子舞や念仏踊り(ニンブチャー)が催され、
霊が帰っていきます。写真は石垣島・四ヶ字のソーロンアンガマ 。
沖縄出身者の多い地区ではエイサーが行われます。